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Project

ナゴヤブランドを発信
<和菓子みやげ>創成プロジェクト

Profile

久野 幹太Kanta Kuno
企画部 企画ユニット長(プロジェクト当時/商務交流部 流通・観光・街づくりユニット)

2002年入所。総務や国際交流の部署での経験を経て、現在は企画部に所属。名商の中期ビジョンの策定や調査事業などに携わる。

※プロフィールは2024年取材時のものです。

牧井 奈々子Nanako Makii
総務管理部 総務ユニット(プロジェクト当時/商務交流部 流通・観光・街づくりユニット)

2021年入所。新入職員として商務交流部で当プロジェクトに参画。現在は総務管理部にて、秘書業務に携わる。

※プロフィールは2024年取材時のものです。

Introduction

商務交流部では、商業全般や観光振興などの、地域の活性化につながる事業を幅広く担う。仕事の形も一定ではなく、地域のその時々の課題に応じて、さまざまな関係者と調整をしながら仕事を進めていく。「地域の顔となる和菓子みやげを創る」という目的にも、仕掛人としてきめ細かく動いていった。

名古屋の魅力を発信する。その方法とは?

「このお菓子、おいしいの?」お客様の問いかけに、牧井は「おいしいですよ!こちらは、もともとみりん屋さんだった和菓子店が作ったもので、みりんが使われているんですよ」と答える――。商工会議所の職員となって、デパートの店頭に立って和菓子をPRすることになるとは思ってもみなかった。

このプロジェクトの始まりは、牧井が名商に入所する前にさかのぼる。2018年、名商にて「躍動し愛されるナゴヤ研究会」が立ち上がり、この地域をけん引する主要企業から委員・メンバーに集まってもらい、これからの名古屋を盛り立てていくために意見を出し合った。その報告書には、名古屋の「食」の魅力向上と、ブランド力強化による観光客誘致を目指すことが記された。その後、コロナ禍が始まり世界規模で経済が停滞するなか、アフターコロナを見据えて名古屋の魅力を再発見し、発信する事業として「新しい名古屋の和菓子土産をつくる」というテーマが決まったのだった。

実は、名古屋は「和菓子どころ」でもある。江戸時代、尾張徳川家では歴代藩主が茶の湯を好み、また武家だけでなく町人の間でも茶道が流行し、お茶請けとして和菓子づくりも盛んになった。市内には、創業 300 年以上の歴史がある老舗も複数存在している。そこで、名古屋和菓子の魅力にスポットを当てた企画がスタートした。

熱意をもって思いを伝え、関係者を巻き込む

その実動部隊は、当時、商務交流部に所属していた久野をリーダーとしたプロジェクトチーム。和菓子のブランド価値を高めるため、既存の名古屋土産ではなく、新商品を開発することが決まった。

「経済団体である名商にできることは<会員の皆さんが主役となって活躍してもらうための舞台>を整えること。今回でいえば、和菓子コンテストの企画と開催でした」

さっそく地元の菓子業界関係者にコンタクトを取り、協力を要請した。

「コロナ禍の影響で、和菓子業界も苦しんでおられました。アフターコロナに向けて、ぜひ和菓子で地域の新たな魅力を発信したいと訴えたところ、先方の課題意識にも響き、『名商がそういう活動をしてもらえるなら』と賛同していただきました」

コンテストについてのアドバイスや、地域の和菓子店へ広くエントリーを呼び掛けるための貴重なルートを得ることができた。

周知にあたっては、個々の和菓子店を直接訪ね、熱意をもってコンテストの趣旨を伝えていった。苦労もあったが、25件のエントリーにつながった。参加店へのメリットとして、入賞者にはネーミングやパッケージ、商品改良について専門家に無料で相談できること、そして販売促進(プロモーション)を名商がバックアップした。そうした事業者と事業者をつなぐ役割や伴走支援においては、名商ならではの強みが発揮できる。

コンテストの結果、8店舗の8商品が選ばれ「なごや菓八菓」ブランドが誕生。2021年3月、ジェイアール名古屋タカシマヤの食料品売場にて、初めて消費者へのお披露目となった。メディアにも大きく取り上げられた。いよいよ本格的なプロモーション支援をスタートさせるこの年、牧井が新卒で入所し、プロジェクトチームに参加した。どんなプロモーションを実践したのか。

「和菓子を地域内外に向けた観光の魅力にすることが目的なので、名古屋城や名古屋港水族館といった観光施設に声をかけ、土産物店に置いていただきました。さらに航空会社にも協力を要請し、機内での試食配布をしていただくことができました。同時に空港の土産物店にも期間限定で商品を置いてもらいました」

そのほか、ビジネスイベントで配るお菓子として大口受注を獲得するなど、いち店舗では難しい「なごや菓八菓」という地域ブランドだからこそ可能なプロモーションが次々に実を結んだ。

より大きなインパクトをもたらす活動へ

続いて、「なごや菓八菓」で生まれたムーブメントを、地域にも広げる取り組みを始めた。名商の会員である50の和菓子店を一軒ずつ取材し、さらに店舗周辺の歴史やお勧めのスポットも掲載することで、お店に出かける楽しみを伝える「なごや和菓子旅」のウェブサイトを立ち上げたのだ。マイクロツーリズム*促進が念頭にあり、シェアサイクルと連携したキャンペーンも展開した。さらに、このキャンペーンでは、大学生にPRのコンテンツ制作に関わってもらうなど、地域一体となった取り組みにつながった。

「和菓子旅のウェブサイトは思わぬ反響を呼びまして、<名古屋の和菓子>の魅力に着目した東京の雑誌メディアが、特集に取り上げるという動きがありました。地域外の人にも魅力を伝えられたと実感できました」

と久野は手ごたえを感じた。

*マイクロツーリズムとは…海外や遠方への旅行とは違い、1~2時間で行ける範囲でする旅行のこと。コロナ禍以降に広まり、身近な地域の魅力に気づくきっかけにもなっている。

牧井はこのプロジェクトを通して、ビジネスパーソンとして多くの経験も得られた。

「実務面では先輩方と動くなかで、『なぜそれを今する必要があるのか、なにが大事なのか』を考えながら仕事をすることを学びました。また、直接関わらせていただいた和菓子店から、『どうしてここまでしてくれるの』という感謝の言葉をいただけたのはうれしかったですね」

地域経済を盛り立てる――それは途方もない目標に見える。しかし地域のプレーヤー(企業)たちと議論を重ね、出てきた方針をしっかりと言語化し、それぞれの関係者に訴えて共有することで、今回の企画は形になっていった。同時に、仕掛人として動く自分たち自身の情熱が高まった。

まだ気づかれていない地域や企業の<魅力>を発信し、光を当てるのも名商の大きな仕事だ。

Another project

アナザープロジェクト(久野)

「名商中期ビジョン」の策定(企画部)

名商中期ビジョンとは、この地域の企業が<5年後の名古屋>を創っていくために何をするのか、その方向性を描くものだ。主体はあくまで企業であり、名商はその策定のサポートを担う。

事務局では、1年半をかけて若手から上役までみんなでアイデアを出し合い、会員企業の意見も聞きながら、しっかり考えたものを最終的な形にしていく。

久野は「この地域のリーダーになる人の声を聴いて、どんな<未来>にしたいのかを語れる場。それを取りまとめ、黒子になって自分が動く。そんな経験はここでしか得られない」と語る。

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