プロジェクトを知る
Project

ベンチャー・スタートアップ企業の
<キャンパス>
価値が生まれるハコ作りプロジェクト

Profile

水谷 健太Kenta Mizutani
商務交流部 ビジネスマッチングユニット 次長(プロジェクト当時/産業振興部 モノづくり・イノベーションユニット)

2002年入所。中小企業支援や会員管理、インフラ整備要望等の部署を経て、現在はビジネスマッチングユニットに所属。メッセナゴヤや商談会事業を展開。

※プロフィールは2024年取材時のものです。

樋口 達哉Tatsuya Higuchi
産業振興部 モノづくりユニット(プロジェクト当時/中小企業部 中小企業振興ユニット)

2004年入所。秘書業務などの管理部門や、メッセナゴヤ、中小企業支援の部署を経て、現在は産業振興部に所属。航空宇宙産業の振興やDX推進に取り組む。

※プロフィールは2024年取材時のものです。

Introduction

大小さまざまなステークホルダーと関わる名商では、職員自身も年次を重ねるごとに、外部とのつながりが増えていく。「なごのキャンパス」の立ち上げプロジェクトは、外部から持ちかけられた「面白そう」な仕事にやりがいを見出し、所属部署の垣根を越えた2名の職員を中心に、新たな事業を作り上げた。

「面白そう」から始まるプロジェクト

名古屋駅にほど近い場所にあり、2015年に廃校となった「旧那古野小学校」。この施設を再活用するため、リノベーションからその後の事業運営まで担う事業者を、名古屋市が公募で決めるという話が名商に入ってきた。当時の東和不動産株式会社(現・トヨタ不動産)がこのプロポーザル*に手を挙げようとしていた。彼らは「ベンチャー企業を育てるインキュベーション施設」の構想を描いており、そのプロジェクトに商工会議所として参画できないか、と打診してきたという。最長15年にわたる規模の事業であり、名商としてもほぼ先例のない話ではあったが、ベンチャー企業の育成は今後の地域経済の活性化に不可欠と、参画を決めた。

「ちょうど、直属の上司と一緒にいるときに話を聞きましたが、すぐに『これは面白い、行くぞ』となっていました」

「実は、私はこの話をまったく別の関係者から聞いていたんです。それで、部署は違いましたが話しかけやすかった水谷さんに持ちかけたところ『あぁ、俺もそれ聞いているよ!』となって。これは行くしかない。じゃあ一緒にやるか、と」

そのあと、上役の判断もスピーディに進み、あっという間に参画が決まった。

*プロポーザルとは…発注者が複数の業者を募り、企画内容の競争によって発注先を決めること。

勝ち取った採択決定。スムーズな立ち上げへ

産業振興部にいた水谷と、中小企業部にいた樋口。プロジェクトには、名商サイドの担当者2名と、東和不動産をはじめ5、6の各分野の事業者と共同で、名古屋市への提案内容の策定に携わった。何度も打合せを重ねて、提案内容をブラッシュアップし、そして見事、採択決定を勝ち取ることができた。水谷は

「地域のキープレイヤーや民間企業の方々と、一緒に仕事を作り上げることにやりがいを感じました。組織内部の人だけでなく、いろんな方と関わって仕事を進めることで、様々な視点や考え方を学ぶことができ、個人の成長にもつながっていくと思います」

と話す。また、樋口は

「共同事業体の中に、名商という140年の歴史がある地元の経済団体で、企業とのつながりも深く、経営支援に実績のある名前があったことは、提案に重みと説得力を与えたのでは」

と分析する。

それからはいよいよ、なごのキャンパスの立ち上げに向けた活動にシフトしていく。改めて名商として何ができるのか、共同事業者との検討を重ねていった。

「オープン後に開催するイベントの企画を始めていましたが、名商としてもさまざまな部署と連携して、この場所をうまく生かせるようなイベントを考えていました。多くの職員がこの場を活用して、新しい繋がりやきっかけが生まれれば良いなと。一方で、なごのキャンパスとさまざまな形で関わってくれる法人会員(主に大手企業)を募るため、名商とご縁のある企業にお声がけしたりしました」

また、他の地域でもなごのキャンパスとコンセプトの似たインキュベーション施設やオープンイノベーション施設ができつつある時期だったため、福岡や大阪へ視察に赴いた。そのうえで、この地域に合った施設の形を模索していった。

そして2019年10月、ついになごのキャンパスが誕生。校舎や体育館、校庭は元小学校らしさを残し、「ひらく、まぜる、うまれる、次の100年を育てる学校」をコンセプトに、ベンチャー企業をはじめさまざまな立場が活発に関わり合い、新たな価値を育む施設として大きな注目を集めた。名商は施設内に「サテライトオフィス」を設置し、水谷と樋口も交代でなごのキャンパスにつめ、入居者への支援や交流促進に努めた。現在も名商職員が5~6名ほど交代で勤務している。

立ち上げにはいろいろな苦労や悩みもあったかと思いきや、「大きなつまずきはなかった」と口をそろえる。その理由について、

「しっかりと考えた計画通りに実行していったので、大きな障害もなく着地できました」

「関係者同士が、すぐにコミュニケーションをとれる環境でした。なにかあればすぐ変化に対応できる人たちが多いため、単独で悩む必要がありませんでした」

と、この連携体制がいかに円滑なものだったかを振り返る。

なごのキャンパスで見えた名商の潜在能力

なごのキャンパスに参画することで、名商がこれまで実践してきた経営相談、補助金の申請支援、創業支援といったサービスを、より多くのベンチャーやスタートアップ企業に活用してもらえるようになった。

「名商がやるべきことを実践できる場所だと感じています。人と人とのつながりで、名古屋経済は回っています。名古屋を盛り上げる事業者を応援したい、いろいろな人を巻き込みながら盛り上げたいという名商の思いと、なごのキャンパスのコンセプトはまさに同じ方向を向いているんです」

実はベンチャー企業支援・創業支援は、名商としても30年ほどの実績があったが、特にスタートアップ企業には認知度が低い状況があった。なごのキャンパスの運営を通して、認識してもらえる機会も増え、実際に生の声を聴けるようになったことは、名商にとっても大きな変化であった。

元学校を利用したスタートアップ企業向けの施設は他にもあるが、地元の商工会議所が運営にしっかりと入り込んでいる例は、意外と見当たらない。そんななか、商工会議所ならではの多方面を「つなぐ」役割をしっかりと果すことで、成功に導いた。その背景にある名商という組織とは?

「人と人を出会わせて、これをやったら面白いと思うことを実際に形にできる。事業者のためになることであれば、“まずはやってみよう”というマインドがあり、そのために何が必要かの仮説と、道筋を立てたらチャレンジできる環境です」

「商工会議所というと堅いイメージも持たれるんですが、事業者と向き合い、一度関係ができると身近に接することができるようになります。例えば、なごのキャンパスはビジネス街と円頓寺商店街の間にあり、地域との交流も大切にしています。今ではこの昔ながらの商店街を歩いていると『元気?』と声をかけてもらえることも」

「実は、プロポーザルの時に競合していたという事業者と出会ったことがあって。その方に『いい施設ですね』と言っていただけたのも嬉しかったですね」

名商として存在感を示せたことに手ごたえを感じている。

誕生から4年余り。なごのキャンパスは、企業に、街に、職員によい刺激をもたらしている。

Another project

アナザープロジェクト(水谷)

王位戦 勝負おやつコンテスト(商務交流部)

2024年7月6日、7日 に名古屋で藤井聡太王位の防衛戦となる「第65期王位戦 第1局」が開催されるにあたり、名商は名古屋市と協力して地域全体で王位戦を盛り上げるという目的のもと、「勝負おやつコンテスト」を主催した。その狙いには、地元の菓子業者の販促支援、名古屋の観光資源の発掘もあった。テレビや新聞などでの積極的な広告展開を通じて、予想を超える100以上の応募、一般市民からの10,800人の投票があった。当日も多くのマスコミ、SNSに取り上げられ、参加した菓子業者では売り上げの増加につながったと聞く。「前夜祭では藤井王位がおやつコンテストに言及してくれたのも嬉しかった。地域の事業者のために、この企画を実施できて良かった」と大きな反響と効果を実感した。

アナザープロジェクト(樋口)

航空機産業、宇宙産業への種まき(産業振興部)

商工会議所の「工」の部分、ものづくり分野はこの地域の主要産業でもある。そのなかで将来性が期待される「航空機」「宇宙」については、名商としてもさまざまな取り組みを進めている。航空機産業に関しては、地元中小企業の新規参入やビジネス拡大を促す企画を開催。例えば、航空機エンジン部品加工トライアルでは、中小製造業に模擬部品を作ってもらう事業を実施。また、航空機産業の商談会『エアロマート』も隔年で開催。「昨年、パリのエアショーを視察し、ヨーロッパで何が注目されているかを肌で感じてきました」とアンテナを張る。

宇宙産業に関しては、名商が主催する異業種交流展示会「メッセナゴヤ2024」に向けて宇宙産業にフォーカスした企画展を準備中だ。新しい未知の産業に対して、自分なりに考えてアプローチし、ネットワークを広げる仕事に楽しさを感じている。

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